海外旅行に行って現地の人や知り合った観光客と話をした時や、留学先などで仲良くなった外国人の友達に、自分が自信を持って話したことが全く伝わらないことがあります。
例えば、会話の中で好きな旅行先の国名や都市名を言ったり、好きな映画の話をしたりする時に、相手に「何それ?」と怪訝な顔をされたりする時があります。
目次
洋画の邦題について
日本で公開される洋画には、とんでもない邦題を付けていることもあります。
また、単純に原題の英語を日本語読み表記にしただけだと思いきや、全然違う言葉を邦題にしていたりするので、全く相手に通じないことがあります。
例えば、最近では2018年に流行ったディズニーのアニメ「リメンバー・ミー」も、原題は「CoCo」です。
日本では2016年に公開された、サブプライムローンの破綻に関する映画「マネー・ショート」の原題は、「The Big Short」です。
「The Big Short」の本来の意味は「大規模な空売り」という意味なのに、「マネー・ショート」だと「short of money」の「お金が足りない」という意味が妥当なので、全く意味合いが違ってきます。
マット・デイモンが主役の映画「オデッセイ」の原題は、「The Martian」で直訳すれば「火星人」です。
毎回、どうしてこんな邦題を付けたのだろうという映画がたくさんあります。
海外で知り合いになった人に、映画が趣味だと話をしたら、当然「どの映画が好き?」となりますよね?
そこで「オデッセイ」と答えたら、「それ何?」となるわけですよ…
ですから、外国人の友達と映画の話をする時、話が噛み合わないことが多いです。
国名の日本語表記について
外国人と話をする時に、国名や外国の都市名でも混乱することがあります。
漢字圏以外の国名や地名を漢字で表記するには、発音の近い音訳による当て字をするのが一般的です。
この方法も、ある程度混乱に拍車をかけているような気がします。
これは知っている方は多いと思いますが、
ドイツは英語で「Germany」なので、「ジャーマニー」になります。
では、日本語表記の「ドイツ」はどこから来たのかというと、ドイツ語の「ドイチェランド(Deutschland)」から来ていると思われます。
因みに、ドイツの日本語による漢字表記(当て字)は「独逸(ドイツ)」になります。
でも、ドイツ語から来たとすれば「ドイツランド」になるはずですが、なぜ略語のドイツ?
日本は、江戸時代からオランダとの交流が盛んです。
そして、オランダ語で、「ドイツの」という意味の単語が「Duits(ダウチ、ダウツ)」になります。
日本語の「ドイツ」は、これを語源にしているのでは?という方もいます。
また、ドイツ語で、「ドイツ語」という意味の単語が「Deutsch(ドイチ、ドイチュ)」になります。
発音が似ているので、個人的には「これが語源ではないか?」と思うのですが…どうでしょう…
スイスの英語表記は、「Switzerland(スウィッツァランド)」になります。
スイスで使われる言葉は、主にドイツ語・フランス語(公用語はイタリア語とロマンシュ語を含めて4ヶ国語)です。
日本人が使う「スイス」は、フランス語の「Suisse(シュイス)」から来ていると思われます。
そして、スイスの日本語による漢字表記(当て字)は、「瑞西(スイス)」になります。
でも、この瑞西をどうしてスイスと読むのかはわかりません。
「瑞」は「ずい」なので、完全に当て字ですね。
実は、英語にも「Swiss(スイス)」という言葉はあります。
これは、国の名前ではなく、「スイスの、スイス人の」という形容詞や、「スイス人」の名詞になります。
ですから、英語圏の人に「スイス」というと、国名ではなく「スイス人」のことだと勘違いされます。
ベルギーは、英語では「Belgium(ベルジュゥム)」になります。
ベルギーの公用語は、オランダ語・フランス語・ドイツ語になります。
日本人が使う「ベルギー」は、オランダ語の「Belgie(ベルヒア)」から来ています。
そして、ベルギーの日本語による漢字表記(当て字)は、「白耳義」になります。
この白耳義も当て字とは言え、なぜ「ベルギー」?
オランダという日本語表記やDutchの件
オランダは、英語では「(The) Netherlands(ネザラーンド)」になります。
オランダ語では、「Nederland(ネーデルランツ)」になります。
「Holland(ホーランド)」もよく使われますが、オランダ西部の地域ホラント州(現在は南北2州)から来ています。
「オランダ(人、語)の」という意味で、英語には「Dutch(ダッチ)」という言葉がありますが、あまり良い意味では使われないことも多いです。
例えば、
Dutch account:割り勘
Let’s go Dutch:割り勘にしよう
in Dutch:困って、問題を起こして
Dutch cap:避妊具
Dutch wife:現地妻 (オランダ領東インド[現インドネシア]に長期滞在中のオランダ人が持った愛人の事)
Double Dutch:ちんぷんかんぷん、わけがわからない話、
2本の縄を使って跳ぶ縄跳のことも言います。
他にも、「Dutch」を使ったスラングは色々あります。
これは、英蘭戦争で苦戦したイギリスでは、当時反オランダの感情が強く、ネガティブな意味合いで使われることが多かったそうです。
日本語のオランダは、「Holland(ホーランド)」から来ていると思われます。
日本とオランダが交流を待ち始めた当時、オランダの中心地が「Holland州」だったそうです。
国としても、通称「Holland(ホーランド)」と呼ばれていました。
そして、「Holland」のポルトガル語訳である「Holanda(ホランダ)」という言葉が、ポルトガル経由で伝わり「オランダ」になったと言われています。
また、オランダの日本語による漢字表記(当て字)は、「和蘭陀」になります。
都市名の日本語表記について
国名もそうですが、日本語表記の都市名も混乱します。
イタリアのフィレンツェは、英語表記だと「Florence (フローレンス)」になります。
イタリア語だと「Firenze」で発音は「フィレェンツェ」となり、日本語の「フィレンツェ」とほぼ同じですが、若干発音が違います。
イタリア語が話せてイタリア人と対等に話せる方には、多分問題なく伝わると思います。
しかし、英語で話をしていて「フィレンツェ」と言っても、相手は「?」となります。
プラハは、英語だと「Prague(プラーグ)」、ドイツ語では 「Prag(プラーク)」になります。
チェコ語・スロヴァキア語だと、「Praha(プラハ)」になります。
日本語表記の「プラハ」で発音しても、チェコ語と同じなので、現地の人には通じます。
ミュンヘンは、英語だと「Munich(ミュニック)」になります。
ドイツ語だと「Munchen」で、読み方は「ムンシェン」になります。
現地の人に日本語の「ミュンヘン」と言っても、多分伝わらないと思います。
ケルンは、英語だと「Cologne(コローン)」になります。
ドイツ語だと「Koln」で、読み方は「コルン」になります。
現地の人に日本語の「ケルン」と言っても、通じるかどうかは微妙です。
ベネチアは、英語だと「Venice(ヴェニス)」になります。
ベニスの商人というのがありますが、これはそのまま英語読みで使用していますね…
イタリア語だと「Venezia」で、発音は「ヴェネツィア」になるので、日本語表記とは若干違います。
アテネは、英語だと「Athens(アセンズ)」になります。
ギリシャ語だと「VAthinai」で、発音は「アシーネ、アシーナ」になるので、アテネでは通じないと思います。
では日本語の「アテネ」はどこから来たのかというと、三省堂の辞書にイタリア語の「Atene(アテーネ)」が元だと有りました。
オランダ語では「Athene」なので、発音はこれも「アテーネ」になります。
イタリア語が元だというのは無理があるので、日本と関係が深かったオランダ語の「アテーネ」から来たのではないかと個人的には思います。
ウィーンは、英語だと「Vienna(ヴィエナ)」になります。
以前、外国人の友達に、「ヴィエナに行ったことがあるか?」と聞かれて、「?」となったことがあります。
ドイツ語だと「Wien(ヴィーン)」となるので、「ウィーン」表記はどこから来たのでしょうか?
考えられるのは「Wien」の「W」から、「ウ」と発音したのではないかと…
オーストラリアで、現地の人に「ウィーン」と発音しても、多分通じないと思います。
チューリッヒは、英語だと「Zurich(ズーリック)」になります。
ドイツ語の「Zurich」の発音は、「ツゥリッヒ」、フランス語だと「ジューリッケ」、オランダ語だと「ジューリッヒ」
スイスは、主にドイツ語とフランス語ですが、チューリッヒはドイツ語圏なので、発音はドイツ語の「Zurich(ツゥリッヒ)」になります。
日本語表記の「チューリッヒ」は、このドイツ語の「Zurich(ツゥリッヒ)」から来ていますが、「チューリッヒ」で伝わるかどうかはちょっと微妙です。
自分もスイス人の友達に「チューリッヒ」と言ったら、相手は「?」となっていました。
ドイツ語の「Zurich(ツゥリッヒ)」とは、やはり発音がちょっと違います。
ナポリは、英語だと「Naples(ネイポルス)」になります。
イタリア語では「Napoli(ナポリ)」で、アクセントは違いますが日本語表記の「ナポリ」でも通じます。
ナポリ語では「Napule」で発音は「ナープラ」になります。
フランス語も「Naples(ナープラ)」で、ナポリ語とほぼ同じです。
「オランダは正式な国名ではない」とオランダが宣言
上にも、日本語の「オランダ」の語源や、英語などで「オランダ」を意味する言葉などの事を述べています。
外国人でも、この「Holland(ホーランド)」という言葉を使う方は多くいます。
ですが、先日オランダ政府が「Holland(ホーランド)は、国名の正式名称ではない!」と公式発表しました。
国際的なイメージ戦略の一環として、このような行動に出たと言われています。
そして、2020年1月以降、オランダを指す正式名称は「The Netherlands(ネーデルラント)」のみとなります。
イギリス大手紙のガーディアンによると、2020年の東京オリンピックでも「The Netherlands」の名称が使用されるとのことです。
また、20万ユーロ(約2500万円)かけて「オランダ公式ロゴ」の変更も行いました。
下記の左が古いロゴで、右が新しい公式ロゴになります。
Today on Brand New (Noted): New Logo for Netherlands https://t.co/aoBJvLccj9 pic.twitter.com/JOIBxkW53W
— UnderConsideration (@ucllc) November 11, 2019
また、オランダ政府観光局は、旅行者数よりも、地域にもたらされる恩恵を重視する戦略に転換することを発表しています。
オーバーツーリズムで観光戦略を転換し、「量より質」を取り、「居住者を最優先」させる戦略への転換です。
予算削減のため、海外拠点を市場規模上位のドイツ・ベルギー・英国・フランス・北米の5カ所のみに限定し、スペイン・イタリア・日本の支局を2020年3月末で閉鎖する予定です。
支局の閉鎖後、観光情報の発信はウェブサイト上のみになるとのことです。、
日本のカタカナ表記の国名・都市名は通じない
日本で使う国名や都市名は、現地語を元に作られた言葉が使われています。
ですから、英語圏の人と話をする時に、カタカナの都市名や国名を言っても、相手には全く通じていないことがあります。
日本人の中には、このカタカナ都市名・国名がそのまま、英語として使えると思っている人も多いのです。
日本政府は、日本の国際化を目指していますが、まずこれらのカタカナ表記を国際標準に合わせるべきではないでしょうか?
世界での共通語と言えば、やはり英語になります。
ですから、例えば、日本語での国名・都市名のカタカナ表記を、英語の発音に基づいたカタカナ表記に統一するとか…
多分、年配の方を中心にかなり混乱すると思いますが、年月が経てばそのうち慣れると思いますが、どうでしょう?